宮沢賢治『月夜のでんしんばしら 』について 、概要・あらすじをまとめ、作品解釈や探求を深めながら、自作のイラストで世界観を紹介しています。
概要×あらすじ
『月夜のでんしんばしら 』とは
著者:宮沢賢治 ジャンル:童話 絵本化される際、電信柱の絵が「子どもにトラウマ級」の迫力のある描写も多く、賢治作品の中でも独特の存在感があります。
あらすじ
ある月夜、少年が鉄道の線路を歩いていると、電信柱たちが軍隊のように行進を始める——。自然と電気、幻想と科学が交錯する、不思議で少し不気味な物語です。
📚 原文は青空文庫で全文公開中
探求×引用文×着想イラスト
シグナルばしらとは?
とつぜん、右手のシグナルばしらが、がたんとからだをゆすぶって、上の白い横木を斜めに下の方へぶらさげました。これはべつだん不思議でもなんでもありません。
つまりシグナルがさがったというだけのことです。一晩に十四回もあることなのです。
ところがそのつぎが大へんです。
劇場版鬼滅の刃の幻の柱。ではなく物語中に登場する「シグナルばしら」は、鉄道用の腕木式信号機のこと。
列車の進行・停止を指示する装置で、かつては人がレバーを操作し、腕木(横木)の位置を変えて信号を送っていました。
ちなみに、腕木が斜めに下がるのは「列車が近づく合図」です。
瀬戸もののエボレット とは?
さっきから線路の左がわで、ぐゎあん、ぐゎあんとうなっていたでんしんばしらの列が大威張で一ぺんに北のほうへ歩きだしました。みんな六つの瀬戸もののエボレットを飾り、てっぺんにはりがねの槍をつけた亜鉛とたんのしゃっぽをかぶって、片脚かたあしでひょいひょいやって行くのです。そしていかにも恭一をばかにしたように、じろじろ横めでみて通りすぎます。
瀬戸もの:陶磁器
エポレット(Epaulette):軍服の肩章
「電信柱が陶磁器製の立派な肩章をつけた軍服姿」?賢治は軍隊の威厳を人工物に重ね、擬人化によって読者に異様さと荘厳さを感じさせています。
でんしんばしらの軍隊【イラスト】

「ドッテテドッテテ、ドッテテド、
でんしんばしらのぐんたいは
はやさせかいにたぐいなし
ドッテテドッテテ、ドッテテド
でんしんばしらのぐんたいは
きりつせかいにならびなし。」
熱力学第二則 とは?
おまえの町だってそうだ、はじめて電燈がついたころはみんながよく、電気会社では月に百石
ぐらい油をつかうだろうかなんて云ったもんだ。
はっはっは、どうだ、もっともそれはおれのように勢力不滅
の法則や熱力学第二則がわかるとあんまりおかしくもないがね、どうだ、ぼくの軍隊は規律がいいだろう。
軍歌にもちゃんとそう云ってあるんだ。
熱は高温の物体から低温の物体へ自然に移動し、その逆は自然には起こらない、という法則。不可逆であること。
電気総長って何者?【考察】
「おれは電気総長だよ。」
恭一も少し安心して
「電気総長というのは、やはり電気の一種ですか。」とききました。するとじいさんはまたむっとしてしまいました。
「わからん子供だな。ただの電気ではないさ。つまり、電気のすべての長、長というのはかしらとよむ。とりもなおさず電気の大将ということだ。」
「おや、電燈が消えてるな。こいつはしまった。けしからん。」と云いながらまるで兎のようにせ中をまんまるにして走っている列車の下へもぐり込みました。
「あぶない。」と恭一がとめようとしたとき、客車の窓がぱっと明るくなって、一人の小さな子が手をあげて
「あかるくなった、わあい。」と叫んで行きました。
でんしんばしらはしずかにうなり、シグナルはがたりとあがって、月はまたうろこ雲のなかにはいりました。
そして汽車は、もう停車場へ着いたようでした。
人間かな?って思ったけどやっぱり異質な存在。握手したら電気びりびりになったり、走っている列車の下にもぐったり…軍人の無鉄砲さと同時に、人々の暮らしを守る勇ましい姿を表している…それは、電気もまた私たちの生活を陰で守り続けていることを示している?
他のでんしんばしらと違い、人の姿をしているのは知性が高いことを象徴、または人と機械の融合…未来はロボットがつくられることを予見した存在?
電信柱と自然【解釈】
月夜という自然の時間帯に、人工物である電信柱を登場させることで、
人間と自然と技術が共存する風景を物語化している。
「自然の夜」と「人工の光」の共演を、賢治が理想とする調和的な宇宙観の一部
少年の行動の裏にある心理【考察】
罰金や危険を承知で線路脇を歩く少年。
父親の出兵?生活の困難?直接描かれない「背景の絶望」を想像させます。
この空白が、読者に深読みの余地を与えます。
読後の変化×学び×まとめ
夜に見ると威圧感があり、綺麗に並んでいる電信柱は確かに軍隊のよう。月夜とでんしんばしらと軍隊を組み合わせた不思議な世界観に引き込まれました。



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